ブレード材とハンドル材

ブレード材とハンドル材

ナイフのブレードやハンドルには様々な素材が使われていることをご存じでしょうか。

ブレードの場合は、強い力が加わった場合、変形に耐えるための硬度や、急な衝撃を受けた場合、刃の欠損に耐える靭性、錆びにくい耐食性、エッジ保持力(刃持ちの良さ)が重要視されています。

また、ブレード材は主に耐食性が高くメンテナンス性に優れるステンレス鋼と、研ぎやすく切れ味が鋭い炭素(カーボン)鋼に分けられます。ステンレス鋼とカーボン鋼にも成分によって細かく違いがあり、それらに含まれない鋼材も存在するため、以下にその中から抜粋して、代表的なステンレス鋼の例を紹介していきます。

主なブレード材

素材名特徴
ATS-34日本の日立金属が開発したステンレス鋼。優秀で一般的なカスタムナイフの素材でしたが、開発した日立金属は既に売却されて社名変更しており、本製品も2017年に製造中止となってしまいました。
RWL34RWL34は、粉末冶金製の高性能ステンレス鋼で、耐食性が高く、錆びにくいため、湿気や水に強いのが特徴です。硬度はHRC60以上で、耐摩耗性にも優れており、刃の鋭さが持続します。現在はATS-34の代替金属として注目されています。
440-Cステンレス鋼の中でも特に硬い硬度を出すことが出来ます。また、カーボンを多く含有していて切れ味がよく、耐食性にも優れています。
154CMアメリカのクルーシブル社が製品化したステンレス鋼。硬度と耐食性に優れています。
H-2アメリカのスパイダルコ社に商標登録されているステンレス鋼。とても錆びにくく、主にダイバーなど海での仕事で使われています。日本ではH-1と呼ばれ、この素材が使われている代表的なナイフというと『サビナイフ』が頭に浮かぶ人が多いでしょう。
V金10号武生特殊鋼材製のステンレス鋼。エッジ保持力に優れていて硬く、それでいて研ぎやすいのが特徴です。
D2セミステンレスと呼ばれており、ステンレス鋼とカーボン鋼の中間的な性質を持っています。中間ということもあり、思っている以上にサビるので、D2が使われているナイフを選ぶ際には、注意が必要です。
スーパーゴールドⅡ武生特殊鋼材製で、錆びやすかったハイス鋼に耐食性を持たせた、粉末冶金ステンレスハイス鋼です。
VANAX読みは「ヴァナックス」。窒素鋼で耐久性が高く、炭素を窒素に置き換えることにより、ステンレス鋼と比較しても耐食性に優れてい素材です。

上記以外にはダマスカス鋼と呼ばれる、中心材として使用した鋼材に、複数の種類の金属を重ねて鍛造されるものがあり、こちらは重ね合わせる素材によってステンレス鋼かカーボン鋼かに分かれるので、番外編として紹介させて頂きます。

ダマスカス鋼は複数の素材を重ねることにより、独特の美しい波模様が浮かび上がります。複数の金属を重ねているため、そのぶん高価になりやすいのですが、耐久性にも優れています。また、研磨の仕方によってはせっかくの波模様が損なわれる可能性もあるので注意が必要な素材となっています。

ハンドルの場合は、長期間の使用に耐え得る耐久性、水に濡れても劣化しない耐水性が重要です。

ハンドル材は天然材と人工材に分けられ、実用性を重視する場合ですと丈夫な人工材の方が優れていますが、天然材の場合は木目や貝殻など、使用した素材によってひとつひとつ異なる見映えと、触感の違いが魅力です。

以下に主なハンドル材を紹介します。

主なハンドル材

天然材

素材名特徴
ウッド天然木材を使ったハンドル材。木なので水に弱く、湿度の変化でヒビが入ることがあります。品種によって色や木目の柄に違いがあるので、自分好みのものを選ぶのが良いでしょう。
スタッグ鹿の角を使った天然材。表面に自然の凹凸があるのが特徴です。牛や山羊などの角を使ったハンドル材はホーンと呼びます。
ボーン動物の骨を使った天然材。表面に凹凸をつけたものをジグドボーン、オイルを染み込ませて飴色にしたものをオイルドボーンと呼びます。
パール貝を使った天然材。虹色に輝く光沢の美しさが魅力です。欠けやすく高価なので強い力を込めるような作業での使用は控えましょう。アワビを使ったアバロン、白蝶貝を使ったマザー・オブ・パールが主流です。
レザーワッシャー動物の革を使った天然材。革をリング状の座金(ワッシャー)のようにして、積み重ねて固めたものです。他の天然剤と比べると、フィット感が段違いなので、持ちやすさを重視するのであればこちらがおすすめです。

人工材

マイカルタアメリカのウェスティングハウス社の登録商標で、紙や布をフェノール樹脂で固めた人工材。ハンドル材以外に絶縁体などにも使われています。
G10ガラス繊維にエポキシ樹脂を染み込ませて固めた、合成樹脂の人工材。耐水性や耐熱性に優れいる優秀な素材です。
カーボンファイバー石油やアクリル繊維を炭化させて作る人工材。乗り物の部品などにも使われており、耐久性、耐水性、耐熱性に優れる万能な素材です。
パラコード「パラシュートコード」の略。パラシュートに使用されている紐のことで、一見ただの細い紐のようで非常に丈夫な素材です。タングに直接巻くほか、グリップを強化する目的でハンドル材の上から巻くこともあります。

他にも市販のナイフのハンドルに使われているゴムやプラスチック、ブレード材に使われているようなステンレス鋼、カーボン鋼のような金属、色鮮やかな樹脂系の新素材がハンドル材として用いられることがあります。

次章ではグラインドの形状とその特徴についてご紹介します。ナイフの切れ味に直結する部分ですので、カスタムナイフを選ぶうえで切れ味重視するに是非読んでいただきたい内容となっています。