21世紀に蘇った伝説のスパイ銃! マルゼン ワルサーP38 デタッチャブルシリーズ発売の軌跡

くれいも屋スタッフの多口(Tg)です。ここ20年くらいはサバゲプレイヤーというよりもガンコレクター的な楽しみ方をすることが多くなりました。そんなわけで自前のコレクションや買取銃の中から特にユニークな、どちらかというとゲーム向きではないアイテムを紹介していきたいと思います。

 


今回紹介するのはマルゼンの「P38デタッチャブル」シリーズです。本銃でグッと来た方ならむしろ70年生まれの自分以上にご存知かと思いますが、1960年代に日米でヒットしたスパイアクションドラマ『0011ナポレオン・ソロ』に登場する銃がモデルです。主人公たちが使用し、普段はショートバレルのワルサーP38ですが、状況に応じてサイレンサー付きロングバレル、折り畳み式ストック、スコープを装着したスナイパー・カービンとなります。この状態は主人公たちの所属する組織「アンクル」の名をとり、アンクルカスタムと呼ばれます。この変化のメカニズムは当時の少年から青年までの心をそりゃもうって感じで掴んだようで、このギミックごと再現したモデルガンも発売されました。


▲1970年の中田商店カタログより。ワルサーP38のほか、ブローニングハイパワーがベースの「サブマシンタイプ」もリリースされています。『0011』劇中ではモーゼルM1910や1940がベースのものが使用されたようです。

 

70年代に入ってリリースされたつづみ弾式のエアソフトガンの中には、アンクルカスタムに発想を得たスパイ銃的なアイテムも多かったです。例えばハンドガンサイズの銃本体にバレル、フォアグリップ、ストック、スコープをどんどん付け足していくマスダヤのSSデタッチャブルシリーズや、アサルトライフル風から分解が可能なアーチンエクストラなどが発売されました。いずれもオリジナル銃としてのアレンジや雰囲気は素晴らしかったのですが、リアリティには欠けていました。その理由として70年代当時はモデルガン規制が話題となったこともあり、たとえプラスチック弾だとしてもリアルな形状の銃はおもちゃとしては忌避される傾向があったように思えます(具体的な規制ないし自主規制があったのかどうかは不明)。
80年代に入ると、ヨネザワから『西部警察』のパッケージで、オリジンと同じくにワルサーP38をコアとしたアンクルカスタムが発売されます。本編には登場していないと思いますが。この時はオレンジ色の鼓弾だったと思います。さらに1983年に『ミクロマン』シリーズとして発売された「ガンロボ ワルサーP38アンクルタイプ」が発売され、サバイバルゲーム&モデルガンブームとあわせてちょっとしたヒット商品となっています。

(参考:https://t-machine.jp/item/44033/)

ただしやはりこうなるとよりリアルで、できればサバイバルゲームなどでも使えるようなアンクルカスタムが欲しくなるのが人情です。しかしその後も長らくアンクルカスタムの空白時代は続きました。

 

発売

マルゼンでは今回紹介するガスブローバック式のP38より以前、ワルサーP99をエアガン化する際に、ワルサー社との正規ライセンスを締結しています。P38でも設計図面提供などワルサー社の協力を得て製作されました。実はマルゼンとワルサーP38のつながりは深く、80年代から単発式やカートリッジ式のエアソフトガンなどをリリース。P38といえばマルゼンと言っても過言ではないブランドイメージを築き上げています。いわば満を持して発売されたガスブローバック式P38は、まずは通常タイプ各種バリエーションがリリースされます。そしてついに2008年12月、各種アクセサリーパーツの発売予告と共にデタッチャブルP38本体が発売されました。

 


それでは個別の紹介です。まずはこちらがデタッチャブル本体となります。2008年の初版以降、2010年前後に何度か再販されていますが、この時期の製品は専用のガンケースに入った状態で販売されました。


さらに初回ロット特典のみ「S」と「K」のグリップイニシャルシールが付属しています。このシールはデタッチャブル本体とあまり時期をあけずにリリースされた別売りグリップセットにも付属しています。しかし筆者は初回ロットには間に合わず、今回紹介するデタッチャブル本体はケースこそついていたのですがシールのない2次ロット以降のものです。別売りグリップにはシールが付属したものの、さすがにグリップだけダブっても……ということで、現時点でもシールは入手できず終いでした。別売りグリップはツヤあり、本体付属はツヤなしと一応差別化は図られていたんですけどね……。

余談ですが2020年に再版されたデタッチャブル本体は、ケースはつかないもののこのシールは同梱されるとのことで、すでに銃は持ってるけどシールが無い人は、2挺目を入手できてS(ナポレオン・ソロ)用とK(イリヤ・クリヤキン)用が作れて最高ですね! 


先端のマズルは着脱可能。外してなお外から見えるかどうかな長さのインナーバレルは非常に短いものとなっています。そのため性能にも直結していますが、やはり飛距離よりも秘匿性が優先ですよね。別売りのエクステンションバレルの内径は6mmとなっており、弾道の安定化が図られています。

 


他のP38モデルと同様フィールドストリッピングでここまで分解できます。バレルアセンブリ(ショートアウターバレルユニット)とマズルが一体となった別売りのバレルセットも販売されていました。たしかマズルブレーキがツヤありになっていたと思います。別売りのバレルセットとグリップに交換すれば、ノーマルのワルサーがデタッチャブル仕様になるというわけです。なお、ある人は本体がシルバーのアンクルセット(ガンロボやメガトロンのレシピですね)を作るために、いまなお別売りのショートバレルセットを探しているようです(銀に塗るそうです)。


カービンストックはグリップの後部下端に装着可能。パットプレートが可倒式で全長も二段階に伸縮可能なため、収納時はコンパクトなサイズになります。



エクステンションバレル装着時に射撃を行う場合は、バレルユニット下のロッキングラグとロッキングラグスプリングを外します。この作業は工具を使わずに着脱が可能ですが、外したパーツを紛失しないように気を付けましょう。

 


ロングマガジンは、本来のマガジンを2本連結したような外観とサイズ。露出している下半分はBB弾スロットなどはないため、実際の装弾数は純正と変わらない12発です。

ただしロングマガジンのみの機構として装弾部付近にフォロワーロックが設けられ、スライドストップがかかることなく空撃ちし続けることが可能となっています。空撃ち行為はあまりよくないこととされていますが、個人的にはお座敷シューターなので通常マガジンはもちろん、他機種や他社のマガジンにまで標準装備してほしいアイデアでした。


▲上が通常マガジンのエンプティ状態、マガジンフォロワーが上まで上がりきることでスライドストップをかけています。下がロングマガジンのフォロワーをフォロワーロックに入れた状態。

 


最後に発売されたのがスコープ&スコープマウントです。アマゾンでの取り扱いが2013年3月で、同月中旬の発売だったようです。つまり本体初回ロット発売から実に4年と3か月かけて全セットが揃ったわけです。マルゼンサイトのロングマガジンの案内画像( )によると、第5弾のロングマガジン発売が2010年3月の告知で4月発売だったようすので、そこからまるまる3年待たされています。


スコープの構造は「プロップガンのイメージを再現したアクセサリーパーツです デザイン、ディテールを重視した製品の為 機能や構造上の強度が不足している部分があります 実際のスコープとしてお使いになる事ができませんので予めご了承下さい」とパッケージでも明言されています。この仕様を確定させるための苦悩の時間だったのでしょうか。個人的には手にしたときにがっかりを感じなかったといえばウソになりますが、プロップアイテムとして考えるとこの単純な構造で正解だと思います。

ちなみに昭和の頃にこのスコープとほぼ同じ形状のものが売られていまして。さらに昔のアンクルカスタムについていたものをモデルにしたのか、それとも今回のスコープセットがそれをモデルにしているのか気になっています。今の水準からするとすごい小さくて……実はもっていた覚えがありますので捨ててなければあるいはどこかに……。

 

組立


それでは組立ですが、まずはカービンストックを下方向から装着。接続部のネジは手でも締めることができます。


マズルブレーキを外してエクステンションバレルを装着。なお、先端のサイレンサーを直接マズルの替わりに装着することもできます。ハンドガードは2mmレンチで固定する方式で、好きな位置にセットすることができます。


スコープは右側グリップに装着。どう考えてもカートリッジの排出される方向を塞いでいるような気がしますが、おそらくなんとかしているのでしょう……。


個人的には左側に装着できるスコープマウントと、もうちょいごついスコープが欲しいです。


そしてロングマガジンを装着。装弾数は変わらなかったおかげで、はみ出した部分にBB弾が見えないようになっているわけですね。

 



完成です。小型化の極みのサイズだったワルサーが、狙撃銃へと変身! 完成まで待たされたこともあり、ここにたどり着いた時の感動もひとしおでした。ちなみにいまだにBB弾は発射してません。