今回は少し変わり種のナイフをお譲りいただきました。独特の刃紋を表出させるダマスカス鋼を使用した、小柄型ナイフとなります。製造元はその銘から裕翠工房によるもののようです。
木目のような模様を持つダマスカス鋼は古代インドで開発された特殊なるつぼ鋼で、当時の刀剣などに使用されていました。しかしその製造は17世紀をピークとして、19世紀頃に途絶えてしまい、製法についても技術継承が断絶してしまっています。現在のダマスカス鋼は、現存するダマスカス刀剣を解析して再現されたものです。鋼材に混ぜ込む不純物などが要とされていますが、いまだ完全な再現はできていないとも言われています。現在のダマスカス鋼は、異種の金属を積層して鍛造することで、刃紋を再現したものとなります。このへんの技術継承の断絶、近年の日本の下町の工業技術の話をちょっと思い出します。
裕翠工房はもとは高校教師でありハンターであった伊藤裕翠氏が、狩猟のために自らが考える実用性のあるナイフを自作し始めたことが発端となっています。伊藤裕翠氏はナイフに対して、良好な強度とメンテナンスの容易さ、最高の切削性能、高度な実用性を持たせることをポリシーとしています。その解答が氏の製作する「粉末ハイスR2」を芯材として外側にステンレス鋼を用いたダマスカス鋼製ナイフです。
今回のナイフのモチーフとなっている小柄(こづか)は、日本刀の鞘の鍔近くに納められる小刀です。木を削ったりちょっとしたものを切断したりなど、日常の様々な場面で便利に使われました。むしろ刀本体よりも活躍したかもしれませんね。やがて刀装具として隠れた装飾品として美術工芸品として扱われるようになっていきました。柄のワンポイントも実際の小柄に多く見られる装飾ですね。
今回の小柄型ナイフは、そのまま刀装具として使えそうな小柄のフォーマットを踏襲しつつ、専用の高品質なレザーシースが付属します。サイズや形状などからペーパーナイフとして使えそうですが、切れ味がとても鋭いため少し注意が必要であるかもしれません。実際の小柄と同じように、メインで持ち歩くナイフよりも細かな作業などに用いるのがよさそうです。
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