
CAWより発売された、八九式重擲弾筒後期型をお譲りいただきました。この度はくれいも屋をご利用いただき、ありがとうございます!
八九式重擲弾筒は、第二次世界大戦期の日本軍が運用した軽迫撃砲で、手榴弾と迫撃砲の中間に位置する独特な火力支援兵器です。
歩兵が携行できるサイズながら高い命中精度を誇り、日中戦争や太平洋戦争で活躍しました。
本記事では、八九式重擲弾筒の構造や部品名称、採用背景、発射方式、評価に加え、「ニー・モーター」と呼ばれた逸話や登場作品についても解説します。
併せて、C.A.W.製MOVIE PROP仕様の特徴と魅力も紹介します。
CONTENTS
八九式重擲弾筒とは?日本軍が生んだ軽迫撃砲
八九式重擲弾筒は、第二次世界大戦期に日本軍歩兵部隊で運用された軽迫撃砲・擲弾発射器です。
携行できる小型サイズながら曲射攻撃が可能で、遮蔽物の背後にいる敵への火力支援を担いました。
シンプルな構造と高い実用性により、多様な戦場環境で活用された点も特徴です。
ここでは、八九式重擲弾筒の基本概要や構造、各部名称について解説します。
八九式重擲弾筒の基本概要
八九式重擲弾筒は、1920年代末から1930年代初頭にかけて開発され、大日本帝国陸軍に採用された小隊支援用火器です。
口径50mm、全長約610mm、重量約4.7kgと比較的軽量で、兵士が携行して迅速に展開できる設計となっています。
専用の八九式榴弾を使用した場合の最大射程は約670m、有効射程は約120mとされ、手榴弾を使用する場合は約200m程度の射程を持ちます。
1930年代から終戦まで製造・配備され、日中戦争や太平洋戦争などで広く運用されました。
迫撃砲ほど大型ではないものの、分隊レベルで運用できる機動性と火力支援能力を兼ね備えた兵器として重要な役割を果たしました。
八九式重擲弾筒の各部品の名称
八九式重擲弾筒はシンプルながら機能的に設計されています。
ここでは、八九式重擲弾筒の各部品の名称を紹介します。
- 本体上部に設けられた基準線
- 目標方向へ正確に向けるための指標
- 目盛りに合わせることで素早く照準可能
- 弾体を装填する中心部分
- 内部で安全に弾頭を保持
- 最大約670mの曲射が可能
- 回転により筒の角度を上下に調整
- 射程距離を細かく設定可能
- 精度の高い射撃を支える重要機構
- 本体を支える支柱部分
- 射程設定用の目盛り付き
- 距離調整の基準となる
- 引くことで撃針が雷管を打撃
- 弾体を発射させるトリガー機構
- シンプルで高い信頼性
- 砂やホコリの侵入を防止
- 過酷な環境でも安定作動を維持
- 地面に設置する台座
- 反動を吸収し射撃精度を向上
- 弾体を収める構造
- 撃針機構と連動して発射
- シンプルで高い耐久性
- 有効半径:約10m
- 遮蔽物の裏にも攻撃可能
- 信管調整で発射可能
- 最大射程:約200m
- 実戦で広く使用された
日本軍が八九式重擲弾筒を採用した背景
歩兵が携行できる火力支援手段として、手榴弾をより遠距離へ正確に投射したいという要求から開発されたのが八九式重擲弾筒です。
1920年代初頭に仮採用された十年式擲弾筒は、最大175mの射程を持つ日本初の装備でしたが、手榴弾を使用する構造上、威力と射程の両面で限界が指摘されていました。
そこで「より遠くへ、より大きな破壊力を」という方針のもと改良研究が進められます。
開発は関東大震災の影響で一時中断しましたが、その後再開され、専用榴弾を用いることで最大約670mの射程と高い殺傷力を実現しました。
こうして完成した八九式重擲弾筒は、分隊レベルで運用できる強力な支援火器として採用され、歩兵戦術を支える重要装備となったのです。
【豆知識】ニー・モーターと呼ばれた理由と誤解
八九式重擲弾筒はその実用性の高さで戦場に強い印象を残した兵器ですが、アメリカ軍では「ニー・モーター(Knee Mortar)」という独特の呼び名で知られるようになりました。
この名称は構造上の特徴から生まれた誤解に由来するとされ、戦場での逸話とともに語り継がれています。
ここでは、ニー・モーターと呼ばれた理由と実戦での評価について解説します。
なぜ米軍は「ニー・モーター」と呼んだのか
米軍は日本軍から捕獲した八九式重擲弾筒に当初なじみがなく、その形状から誤った認識が広まりました。
八九式重擲弾筒の底部は地面に据え付けて反動を受け止めるため湾曲した形状になっています。
しかし、この部分が膝当てのように見えたことから、「膝に当てて撃つ迫撃砲」と誤解され、「ニー・モーター(Knee Mortar)」と呼ばれるようになったとされています。
実際には膝撃ちは想定されておらず、地面に設置して使用する兵器です。
誤った名称を信じた兵士が膝に当てて発射し、反動で大けがを負ったという逸話も伝えられており、注意喚起が行われたともいわれています。
日中戦争や太平洋戦争で活躍
八九式重擲弾筒は日中戦争から太平洋戦争にかけて広く運用され、歩兵部隊の火力支援を担う重要な装備として活躍しました。
専用榴弾による曲射攻撃は、塹壕や遮蔽物の背後に潜む敵や機関銃陣地の制圧に効果を発揮し、歩兵戦闘の柔軟性を高めました。
発射音が比較的小さく、発射位置を特定されにくい点や兵士が携行して迅速に展開できる機動力の高さも、連合軍にとっては対処の難しい脅威となりました。
携行性・威力・命中精度のバランスに優れた本器は、日本軍の歩兵支援兵器の中でも完成度が高い装備として評価されています。
八九式重擲弾筒の発射方式

発射に際しては常に地面に対して45度の角度に設置して用いられることが前提となっています。
飛距離については撃発機構を含むブロックが発射筒内を上下に移動する構造になっており、筒内で発射する位置を変化させて調整します。
エアーソフトガンがバレルの長さでパワーが変化するのと同様に、遠距離に対しては発射位置を下にしてバレルを長く使い、逆に距離が近ければ銃口付近から発射しています。
バレル内にはライフリングも施されており、これが飛距離の秘密ともなっています。

発射時には八八式榴弾の銅製弾帯が膨張し、ライフリングとかみ合う構造でした。
下半分のパイプ部分には飛距離を示した目盛りが刻まれており、バレル下(写真ではパイプの右)に設けられたつまみ(整度器)で引鉄のレバー位置を移動させて発射位置を調整します。
一見複雑な仕組みですが使用する弾薬側の調整を必要とせず、例えば土嚢や倒木などに立てかけて角度を固定した状態で射程距離の調整が可能でした。
もちろん状況にあわせて水平に用いたりなど45度以外の角度で使用することも可能です。このへんは発射口から榴弾を落として、自重で激発する墜発式では不可能な利点ですね。
八八式榴弾の特徴

使用する八八式榴弾の重量はおよそ800g。この重さを600~800m先へと飛ばすわけですから、当然発射時の反動も相当なものとなります。
そのため、やわらかい地面などで撃つために台座部が湾曲しており、丸太などに固定できるようになっています。

しかし八九式重擲弾筒を鹵獲した米兵はこの湾曲を、大腿部で構えるためのものと勘違いしてしまいます。
そのため「ニー・モーター」の愛称で呼ばれますが、実際にその状態で発射すると発射時の反動で負傷する米兵が続出し、米軍内で注意喚起が行われる事態となりました。
八九式重擲弾筒の評価
八九式重擲弾筒は、携行可能なサイズでありながら高い火力と命中精度を備え、歩兵部隊の戦闘力を大きく高めた支援兵器として評価されています。
本兵器は軽迫撃砲と擲弾発射器の中間的な性格を持ち、実戦での有効性や独自の設計思想は各国からも注目されました。
ここでは、戦場での評価と他国兵器との比較から、その実力を解説します。
八九式重擲弾筒の戦場での実戦評価
八九式重擲弾筒は実戦において高い効果を発揮した兵器として知られています。
沖縄戦のシュガーローフの戦いでは、機関銃陣地を支援する米軍部隊に対して正確な曲射射撃が行われ、陣地にとどまっていた部隊が大きな損害を受けたと記録されています。
射撃音が比較的小さく、位置を特定されにくい点や歩兵が携行して迅速に展開できる機動性も、敵にとって対処を難しくする要因となりました。
一方で、瞬発信管の特性上、斜面への着弾による不発や、枝葉・電線などへの接触で空中炸裂する危険性も指摘されています。
それでも軽量で高精度な火力支援が可能な装備として、日本軍歩兵の戦術的柔軟性を高めた兵器と評価されています。
他国兵器との比較評価
八九式重擲弾筒は、小銃擲弾と迫撃砲の中間的な役割を担う兵器として設計され、携行性と火力を高い水準で両立していました。
ライフルグレネードが有効射程約150m前後で威力も手榴弾相当だったのに対し、八九式重擲弾筒はそれを大きく上回る射程と破壊力を持ち、実質的には小隊用軽迫撃砲に匹敵する性能を備えていました。
同時期の各国軽迫撃砲と比較しても、同等の威力を持ちながら重量が大幅に軽い点は大きなメリットでした。
この設計思想は中国軍の擲弾筒開発にも影響を与え、英国の小型迫撃砲や米軍の運用研究にも共通する要素が見られます。
携行火力支援兵器としての完成度の高さから、当時の連合軍にも強い印象を残した装備といえるでしょう。
八九式重擲弾筒が見られる作品
八九式重擲弾筒は、日本軍を象徴する歩兵支援兵器の一つとして戦争映画やドラマ作品にも登場しています。
曲射攻撃という特徴的な運用方法は映像表現でも印象的に描かれ、戦場の緊張感や兵器の脅威を伝える演出に活用されています。
ここでは、八九式重擲弾筒が登場する代表的な作品を紹介します。
独立愚連隊
1959年公開の日本映画で、独立第九〇小哨の隊員たちが装備する火力支援兵器として登場します。
八路軍との戦闘シーンで使用され、分隊単位で運用される支援火器としての役割が描かれています。
戦場の緊張感とともに、日本軍歩兵装備の一端を映像で確認できる作品です。
血と砂
1965年公開の日本映画で、戦闘シーンの中に擲弾筒が登場します。
焼き場陣地を攻撃する場面では、誤って垂直に発射してしまう描写があり、兵器の扱いの難しさや戦場での緊迫した状況を象徴的に表現しています。
戦争映画ならではのリアリティが印象に残るシーンです。
ウインドトーカーズ
2002年公開のアメリカ映画で、太平洋戦線を舞台に日本軍陣地の描写の中で擲弾筒が登場します。
海兵隊による攻撃シーンでは、日本軍側の防御火力として擲弾筒が使用される様子が描かれています。
塹壕や陣地戦の演出と併せて登場し、当時の戦闘環境や兵器運用の雰囲気を伝える描写の一つとなっています。
ハクソー・リッジ
2016年公開の戦争映画『ハクソー・リッジ』では、沖縄戦を舞台に、日本軍陣地を攻撃する米軍に対して日本兵が使用する兵器の一つとして擲弾筒が描かれています。
激しい地上戦の中で、遮蔽物越しに攻撃できる曲射兵器の脅威が演出されており、戦場の緊張感や過酷さを強調する要素の一つとなっています。
映像表現を通して、当時の陣地戦における火力支援の重要性を感じさせる描写となっています。
ザ・パシフィック
2010年放送のアメリカ製テレビドラマシリーズで、ペリリュー戦の描写において日本軍守備隊の防衛戦力として登場します。
陣地防衛の場面で使用され、遮蔽物越しに攻撃できる兵器としての特性が強調されています。
リアル志向の戦場描写の中で、当時の戦術的運用を感じ取ることができるでしょう。
CAW製グレネードランチャー

CAWではこの八九式重擲弾筒を40mmグレネードカート対応のランチャーとして開発しました。
同社はもともと他社製M203ランチャーに対応したモスカートとその対応銃を得意としており、各種ライフルグレネードやベトナム戦争で活躍した M79などのほか、6連発のリボルバーランチャーや20mm径のコンパクトなグレネードハンドガンまで開発しています。

CAW製グレネードランチャーの中でも比較的最近リリースされた八九式重擲弾筒は、様々なオリジナルの機構が組み込まれています。
モスカートの発射距離に関係ない撃発機構の移動はオミットされています。替わりに迫撃用クサビパーツを引鉄部の下にセットすることで、実銃にはない墜発式での発射が可能です。
いずれの発射方式でも、モスカートが飛んでいくわけではないため、発射後に発射口を下に向けてカートを排出する必要があります。
なお、実銃の整度器ダイヤルは、引鉄式で発射する際にモスカートを内部に固定するためのもので、固定用の突起が砲身内に張り出します。


MOVIE PROPの性能
また、今回お譲りいただいた「MOVIE PROP」仕様は、BB弾ではなく発射煙を再現するガスを放出するモスカート版八八式榴弾が2発付属します。
ガス放出後のカートは弾頭部が本体に引き込まれ、撃鉄に連動したロッドが先端に残ります。
1発目を残した状態で2発目を装填し、筒内に2つのモスカートが重なった状態で引鉄を引くと、2発目がガスを放出します。
この機構によって、一発目を排出することなく、あたかも2発連続で発射しているように見えるわけです。

もちろん通常のモスカートほか40mm径のカートも使用可能です。こうしたアレンジは、多数のグレネード製品を開発してきたC.A.W.ならではの余裕を感じますね。
まとめ
曲射によって遮蔽物の背後にいる敵を攻撃できる実用性は、多くの戦場で有効に機能しました。
携行性・命中精度・威力のバランスに優れ、小隊レベルで迅速に運用できた点も大きな特徴です。
また、その独特な構造や運用方法は連合軍にも強い印象を残し、戦史や映像作品を通じて現在まで語り継がれています。
本記事を通じて、八九式重擲弾筒の技術的特徴と戦術的価値を理解する一助となれば幸いです。
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